近年様々な楽器メーカーや個人作家さんの制作によってパンデイロの種類が豊富になり、お店やYOUTUBEの紹介動画等見かける機会も多くなったと感じています。
持ち運びがコンパクトで楽であることや、アコースティックとの相性も抜群で購入を検討しているパーカッションの方も多いのではないでしょうか?
この記事では、そんなパンデイロを概要と魅力を交えてご紹介していきます。
パンデイロってどういう楽器なんだろう?
どんな特徴があるのかしら?
こういった悩みを解決していきます
パンデイロとは
パンデイロはブラジルの打楽器です。
見た目がタンバリンと酷似していますが少し仕様が違っていまして、ブラジルではタンバリンに似た形状の楽器をパンデイロと呼びます。
無形文化財のカポエイラをはじめサンバやボサノバ、ショーロといったブラジル音楽はもちろん、現代ではトラディショナルの域を越え様々なジャンルで使用されるようになり注目され続けています。
ブラジルにおけるパンデイロ
パンデイロの表情豊かなサウンドの土台にはアフリカルーツのリズムが根付いていて、カポエイラやサンバ・ジ・ホーダといったブラジルの中でもアフリカが色濃く残る地域や催事で使用されてきました。この文化は現在も受け継がれています。
パンデイロから生み出される躍動感溢れる力強いリズムと西洋の音楽が結びつくことでショーロと呼ばれる情緒豊かな音楽へと発展していきました。
よりカジュアルに親しまれているサンバでパゴージというものがあります。
家の裏庭で行われるサンバという意味合いがあるのですが、1980年代にFundos de Quintail(フンド・ジ・キンタウ)というグループによりパゴージは大流行となり、現代でもパゴージは一つの文化として現代でも様々な場所で行われています。
パゴージで使われるパンデイロはプラヘッドが主流です。
パンデイロの仕様について
パンデイロの打面には皮が張られているのですが、こちらは山羊皮のタイプをはじめ、合皮やプラスチックのタイプ(プラヘッド)があります。画像のものは山羊皮のタイプになります。
通常皮は毛が剃られてあり、漂白など加工が施されているのですが、ブラジルでは毛がついた状態で売られていることもあります。
下の画像のパンデイロはブラジルで購入したものです。購入時は打面全体が毛に覆われていたのですが、叩くうちに抜け落ちてしまい中途半端な状態になってしまいました。
毛が生えているとミュートがかかっていて音がポコポコとあったかい印象で私は好きです。
ブラジル人には毛が全て抜け落ちるまで叩くと1人前になれると言われました。多分冗談でしょうけど、願掛けみたいな感じで忘れないようにしています。
大きさは8〜14インチと様々あります。一般的なものは10インチです。
ジングルは5枚〜6枚のタイプが多いです。最もスタンダードなものは10インチで5枚のタイプです。
ジングルについては別の記事でも深掘りしていますので良かったら読んでみてください。
チューニングの方法は、タハーシャと呼ばれる金具(画像のジングルとジングルの間にある金具)を器具で締めていくことで張力を調整します。
パンデイロの特徴
打楽器として
パンデイロの特徴は大きく3つあります。1つずつ書いていきます。
ドラムセットの役割をカバー
パンデイロの大きな特徴1つ目は、
パンデイロ単体でドラムセットのような音が出せるということです。
パンデイロ には打面側で出る低音と中音、そしてジングル音があります。
中低音はマイクを通すとカホンにも負けず劣らずのしっかりとしたサウンドが出るので、スネアやバスドラ、タムの役割をカバーできます。ジングルはハイハットの役割をカバーするので8ビートやシャッフルといったリズムもパンデイロで表現できます。
またアコースティックとの相性も非常に良いことや、ドラムを持ち込めない場所でもパンデイロで代用できることが大きな特徴です。
さらにマイクを通す際はエフェクトもかけられるので、自分好みのエフェクトを使用してオンリーワンなサウンドを構築することもできます。
拡張性が素晴らしいですね。
ジングル音
パンデイロの大きな特徴2つ目は
必ずジングル音が鳴ることです。
パンデイロには1つのボディに対して5〜6枚程のジングル(プラチネーラ)が備え付けられていて、良くも悪くもパンデイロを演奏するとジングルは必ず鳴ります。そりゃそうでしょと言われればそうなんですが、少し深掘りします。
構造上、パンデイロ = ジングルと言っても差し支えないほどの関係性なのでパンデイロ演奏はジングル音の扱いも非常に重要な要素となります。
そして構造の問題だけではありません。画像や動画ではわかりにくいのが、実はこのジングル音は相当遠くまで聞こえます。
環境にもよりますが、マイクを通さない場合は打面のアタック音は聞こえづらくなってしまうのですが(野外であれば尚更)ジングル音は野外でも屋内で距離があってもしっかり聞こえます。大所帯のアンサンブルの中でも存在感を確認できました。
目立つ音ですしおざなりにするわけにはいかないですよね?
パンデイロはジングル音もメーカーによって特性が違うので1度聴き比べてみるのもオススメです。最近では比較動画も増えていますので簡単に確認できます。
市販で満足できなかったり探究心が強いガチ勢になってきますと、ジングルを自作する方もいらっしゃいます。
ジングル音は思っている以上に遠くまで聴こえてるんですね
パンデイロの奏法
パンデイロの大きな特徴3つ目は、
奏法がとても独特なことです。
民族打楽器ってくせ強めな奏法もセットですが、パンデイロに関してはくせが強いとかのレベルじゃないです。くせしかありません。
そしてブラジル打楽器あるあるですが、痛みを伴うものが多いです。
左手はパンデイロを振るのでアタックに関しては全て右手で行います。
そして低音に関しては親指と人差し指or中指で叩きます。
手のひらでパシーンって叩くことももちろんあるのですが、、低音に関しては指で処理します。
山崎まさよしさんが演奏の仕方について解説している動画がありますのでこちらご参考ください。
パンデイロには奏法が多数存在しますので、詳しくはまた別記事で触れていきたいと思います。
当ブログの考え方としては、基本的に自分が表現したいことができるのであれば奏法はなんでも良いと思うので、色々試してみることをオススメします。
奏法は自分に合った形がベスト◎
パンデイロの魅力
最大の特徴はドラムセットの様な音が出せることでしたが、パンデイロにはまだまだ沢山魅力があります。1つずつご紹介していきますね。
持ち運びが楽
いきなりこれかよ。。!って思うかもしれませんが。。
パンデイロを初見の方は薄々感じてきていることかと思います。
そう、パンデイロってめっちゃコンパクトですよね。つまり持ち運びがめっちゃ楽
こんなドラムセットみたいなパワフルなサウンド出すのに持ち運びが楽ってもう。。
何せ軽いものですと重量が約300g後半のものからあります(8インチとかだともっと軽い)
ちょっと調べてみたんですが、梨1個が約400gだそうです。梨1個分の重さであれば移動も全く苦になりませんね。車移動でない方にとっては死活問題である楽器の運搬もパンデイロであれば悩むことはありません。
音色が多彩
続いての魅力は、音色が多彩なところです。
先ずは1度聴いてもらった方が早いと思いますので下記の動画でご確認ください。
20秒程の内容ですが、音の全体像が掴めると思います。
低音と、中音、高音(ジングル音)が分けられていて本当にドラムセットに近い感覚ですよね。
低音 → バスドラム
中音 → スネア
高音 → ハイハット
という感じでしょうか。
別の視点で見てみると、パンデイロにはサンバの音が詰まっています。
低音 → スルド
中音 → タンボリン
高音 → ガンザ
このようにパンデイロ1台で多彩な音色が出せることも大きな魅力の1つです。
カスタマイズができる
パンデイロはボディの木枠以外は全てカスタムが行えるので、工作感覚で自分好みに仕様を変更できます。お手軽にカスタマイズできることも魅力の1つです。
カスタマイズに関してはまた別記事で深掘りしていきたいと思いますのでここではざっくり概要だけご紹介します。
- 打面の皮の張り替え
- 打面を別のものに交換
- フープの交換
- ジングルの交換
上記した箇所全てをカスタマイズしたものを、元のパンデイロと比較してみます。
随分変わってしまいました。。
購入時のパンデイロも凄く良かったのですが、やりたい音楽が変わってきたことで音の変化が必要になりカスタマイズに踏み切りました。
ちなみにパーツは交換するだけなので、元に戻すことが可能です。
カスタマイズしても、取り返しがつかない作業とかではないのでご安心ください。
※一部取り返しがつかないポイントがあります。また別記事でご紹介します。
カスタマイズで自分好みに仕上げることができます
気軽にセッションできる
前述しましたとおり持ち運びが楽なのでセッションも気軽にできます。
パンデイロ同士だったり、ギターとだったりサックスとだったり。。公園やスタジオで気軽にセッションを始めることができるので、コミュニケーションがとりやすい楽器です。
ブラジルではサンバ・ジ・ホーダやパゴージと呼ばれるサンバの演奏に合わせて歌い踊る文化があります。こういった場でパンデイロは大活躍しています。
パンデイロのつらいところ
これまで書いたようにパンデイロには見かけとは正反対のとても大きな可能性を秘めている楽器です。ただし、つらいところもあります。。
左腕への負担
左手で振り続け、しかも右手でアタックをするので左手と左腕にかかるプレッシャーは相当なものです。パンデイロの重さだけではなく、アタックの衝撃もプラスされるからです。
奏法によって負担がかかるポイントは若干異なりますが、まず間違いなく左手&左腕への負担で演奏が持続できなくなります。初心者のうちはここの負荷の軽減を体で覚えるか、ひたすらパンデイロ筋を鍛えるかという道を辿ります。
特徴の部分でも触れましたが、ブラジル打楽器は痛みを伴うものが多いです。
無理しすぎると腱鞘炎になりますので、長い目で地道に取り組んでいくことが良いパンデイロライフに繋がると思います。
オススメの練習方法も別記事でご紹介していきます。
結果地道にやっていると慣れてきますよ◎
大所帯には向いていない。しかし…
大所帯になるとパンデイロの存在感は無くなります。前述しましたように大所帯のアンサンブルの中でもジングル音はしっかりと聴こえているので存在感がないわけではないのですが、そうなるとシェーカーと大差ないので、何もわざわざパンデイロを使用しなくても良いのでは。。となります。
しかしながら音が届かないならパフォーマンスで魅せる。ネガティブをポジティブに変換させる発想でパンデイロは活用されています。
実際にエスコーラ・ジ・サンバと呼ばれるサンバ団体では以下の動画のようにパフォーマンスで使われています。
音量では埋もれてしまうけれど、こういう使い方ですと格別に存在感を発揮しますね。
まとめ
パンデイロの魅力について、概要を交えてご紹介しました。
- ドラムセットのような音が出せる
- ジングル音は良くも悪くも常に鳴る
- 奏法が独特、痛みが伴う
- 持ち運びが楽
- 音色が多彩
- 楽器のカスタマイズができる
- 気軽にセッションができる
- 左手&左腕への負担
- 大所帯には向いていない。。けど発想次第で活用できる◎
正直今回書ききれない所もあったので、また今後の記事で補完していきたいと思います。
僕が思うパンデイロの1番の魅力は気軽に始められるところだと思っています。
バッグに入れて、海でも山でも公園でも連れていけるところもいいですよね。(実際に登山の際持参していた人もいます)
これから始めてみたい方、興味ある方にはオススメの楽器です。
最後までお読みいただきありがとうございました。